皆さんはベトナムコーヒーと聞くと「練乳で甘くして飲む」といった甘いコーヒーのイメージが強いのではないでしょうか?長年現地で飲まれてきたベトナムコーヒーは実際このようなコーヒーなのですが、なぜベトナムの現地のコーヒーは濃くて苦いのか?練乳を入れて甘くして飲むのか?と、謎の多いコーヒーでもあります。今回はそんなベトナムコーヒーとカフェ・スアについてお伝えしていきます。
[目次]
- ベトナムコーヒーとは?
- Cà phê sữa(カフェ・スア)とは?
- その他のベトナムコーヒー
1,ベトナムコーヒーとは?
なぜ抽出時間が長い?
一般的なベトナムコーヒーとは、写真の専用器具を使って抽出するコーヒーです。この専用ドリッパーは、植民地時代の宗主国フランスの金属フィルターをアレンジし作られたものです。
このベトナムコーヒーは一見普通のドリップコーヒーなのですが、決定的に異なるのが「抽出時間が極端に長い」ことです。ベトナムコーヒーは、中国語で「滴滴珈琲」と書かれているほど、一滴一滴の時間を掛けてじっくりと抽出します。長い時間をかけて抽出すると、お湯とコーヒー粉の触れる時間が長くなるため、抽出されるコーヒーも濃い味に仕上がります。
このドリップ時間が一般的なドリッパーと比べなぜ長くなるのか?それは、一度コーヒー粉を押さえつけるからです。ベトナムコーヒーの専用ドリッパーには内蓋が付いており、それでコーヒー粉を抑えます。圧迫されたコーヒー粉の隙間が極端に狭くなり、お湯が通りづらくなるのです。そのため抽出時間が一般的なドリッパーより長くなり抽出されたコーヒーは濃く仕上がります。
なぜ濃く淹れるの?
ベトナムコーヒーはなぜ他のコーヒーと比べ濃厚なのか。それはベトナムで生産されるコーヒーの品種に大きく関係してきます。
ベトナムはブラジルに次ぐ世界第2位のコーヒー生産大国です。そして、生産されているベトナムコーヒーの多くがロブスタ種です。ICO~International Coffee Organization~(国際コーヒー機関)によると、2017年のベトナムでは60kg袋のロブスタ種が20,038,706袋も生産されています。
そんなベトナムの国内で飲まれるコーヒーは、もちろんロブスタ種が主流です。品質の良いコーヒーは一般的に国外へ輸出されていきます。そんな国内で消費されるロブスタ種は「苦い」「飲みにくい」と言われており、苦みと独特の風味を持っています。そこで、思いっきり濃厚にすることで、苦みで独特の風味を抑えます。一昔前のエスプレッソ等のイメージですね。そして苦み最大限引き出しその他の雑味等を無くすためにコーヒー豆は、深煎りに焙煎されます。
ただ、苦すぎてしまってはとても単体で飲めたものではありません。そこで練乳を使用します。
なぜ練乳を入れるの?
ベトナムコーヒーといえば練乳で驚くほど甘くする特徴があります。店頭でベトナムのスペシャルティコーヒー を扱っていると、ベトナムへ旅行や仕事で行ったことのあるお客様は「ベトナムコーヒーって練乳入れたあの甘いやつ?」という声を絶対と言って良い程、聞かれます。
ここでは、その「練乳」に注目しお話ししてきます。「なぜ練乳なの?牛乳や砂糖ではダメなの?」と、気になった人もいるのでは?それはベトナムが東南アジアの一国ということにも由来します。
ベトナムは熱帯気候の暑い地域に属しています。さらに、昔は冷蔵庫があまり普及していませんでした。そのため、牛乳を長期間保存することができませんでした。そこで活躍するのが練乳です。糖分を高めることで保存性を高めた練乳は、ベトナムという熱帯気候の地域、そして苦いコーヒーに非常に適していたのです。東南アジアではジャム等も糖分を高め保存性を高めたりするのと同じ要領ですね。
そして、その結果ベトナムコーヒーは練乳を入れて甘く飲むというスタイルがスタンダードとなりました。
2,Cà phê sữa(カフェ・スア)とは?
スタンダードな練乳オレ
昔から知られているベトナムコーヒーは先ほどお話しした通り、練乳を加えて甘くして飲むコーヒーを指します。この練乳オレはベトナム語でcà phê sữa(カフェ・スア=直訳するとコーヒー牛乳)と呼ばれています。
そしてこのカフェ・スアの特徴は、その抽出方法です。一般的に日本で飲まれるカフェオレは、コーヒーに牛乳を注ぎますが、カフェ・スアの作り方はそれとは逆となります。
あらかじめ練乳をカップに注いでおき、その上にドリッパーを置いてコーヒーを抽出していきます。そうして出来上がったコーヒーは、練乳とコーヒーの綺麗な二層に分かれ、見事にお洒落な一杯となるのです。
アイスにするとcà phê sữa đá(カフェ・スア・ダー)
ベトナムは暑い国なので、炎天下で温かいホットコーヒーを飲むの少し辛い気もします。そこでcà phê sữaをアイスコーヒーにしたのが、cà phê sữa đá(カフェ・スア・ダー)です。ちなみにđá(ダー)はロック(ロックアイス)を意味します。
それではカフェ・スアも含めて、これから作り方を見ていきましょう。
Cà phê sữa / cà phê sữa đáの作り方
<準備するもの>
ベトナム式ドリッパー
コーヒー粉(深煎り)
お湯
練乳
氷(cà phê sữa đáの場合のみ)
- コップに練乳を注ぎます。
- 次にベトナムコーヒー専用ドリッパーにコーヒー粉を入れて、蓋で上から抑えます。
- ドリッパーをカップに乗せ、お湯を注ぎます。
- カップにコーヒーが一滴一滴ゆっくりと落ち始めます。
- コーヒーが最後まで落ちきったら、cà phê sữaの出来上がりです。
- cà phê sữa đá は、5 のコーヒーに氷を入れ冷やすと完成です。
※氷は抽出後最後に入れると良いでしょう。
3,その他のベトナムコーヒー
練乳なしのCà phê đen
昔ながらのベトナムコーヒーは練乳を入れるのがスタンダードですが、練乳なしのベトナムコーヒーもあります。それがCà phê đen(カフェ・デン)です。
見た目はブラックコーヒーですが、実際は砂糖を加え甘くしています。要するに砂糖入りのベトナムコーヒーです。こちらもアイスコーヒーは“cà phê đen đá(カフェ・デン・ダー)”と呼ばれ。ホットコーヒーは“cà phê đen nóng(カフェ・デン・ノン)”です。
練乳多めのBạc xĩu
Cà phê đenとは対照的に、練乳多めのコーヒーも存在します。それが“Bạc xĩu(バク・シウ)”です。
作り方はcà phê sữa đáと全く同じ方法で、違いはコーヒーが少なく練乳が多いということです。cà phê sữa đáより更に甘く飲みやすいので、スイーツが欲しいときや苦味が苦手な方にお勧めです。
簡単で甘いベトナムコーヒー
昔ながらのベトナムコーヒーは専用ドリッパーさえあれば淹れ方は簡単です。そして何といっても濃厚で甘くしたコーヒーはスイーツ感覚で楽しめます。また、自宅にエスプレッソマシーンがなくとも、濃厚なコーヒーを抽出できるのもメリットの一つです。
コーヒー通やベトナムにゆかりのある人を除いてはマイナーな飲み方のベトナムコーヒーですが、実はこの容易さや濃厚さは、初心者の方にお勧めしたい器具のひとつです。ドリッパー自体の値段も数百円と安価ですので、一度使って飲んでみる価値のあるコーヒーです。 ※スペシャルティコーヒー 等の豆それぞれの個性を楽しむ時にはあまり適しません。
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